心の傷と失ったもの

 私はときどき、自分がコーキーを産んだあとのことを、人に話したりブログに綴ったりしています。

 誰かのためとか、どうしたいというわけではなく、自分の頭の中を整理するために・・・という感じです。

 前記事に書いたように、産後1ヶ月は悶々状態。

 急にやる気がなくなり、夕飯もつくることができず、子ども達と戯れるだけ・・・。そんなとき夫のやっちゃんが会社から帰ってきて、そんな私に気づき、「なんか出前でもとるか!!」と。

 出前や外食が苦手なやっちゃんの、その何気ない優しさに、その当初はかなり救われました。

 ちょっとしたことなんだけど、そういう支えは1歩踏み出すときに、必要なんだと思います。


 お友だちのお友だちのお子さんがダウン症持ちということで、そのお友だちのお友だち(なんかややこしいからOさんにします。)から電話がありました。ちょうど産後1ヶ月くらいのとき。


 「もう傷は癒された~?」とOさん。

 はじめに、すごく柔らかな口調で尋ねられました。

 そのとき、私の中で、びびっとくるものがありました。

 「きず・・・。そうか、きず・・・。私、傷ついてたんだ・・・。」

 自分への情けない気持ちが、なんだかスーッとひいていく気がしました。


 私にとって、まず必要だったのは、障碍を受け入れられない自分を受け入れること。

 傷ついたならば、それを少しずつ癒していくこと。

 気づくことって、とても大事です・・・。




 それから随分たってですが、産後の気持ちを明確に表してくれた記事を、何度か見ました。


 心理学的には、障碍を持つ子を産んだと同時に、健康な子の存在を失う・・・亡くすというふうになるとか。

 「失うこと」

 自分が思い描いていた健常な子のイメージ、自分にとって大切なものを失う。

 それと、健常な子を産めるはずだった自分というものを失う。

 これはかなりのダメージだそうです。

 そして、こういうショックを受けなかった場合は、意識の下に押し込んでいることが多く、誰かにすぐ話した方がいいとか。

 心がそのことを考えると混乱したり、破綻するので、自動的に押さえて意識に上ってこないようにしているからと。

 混乱するのは普通の反応だから、そのときにど~~~っと出しちゃった方がいいということですよね。(なんだか病気の原理とも一緒だなあ)



 こういうことを知って、私はまたまた産後の自分の考えの整理がつきました。

 
 私は小さい頃から「子どもは男の子がほしい!!そして、野球選手にするの~~!」

 なんて言っておりました。

 ですから、おなかの子が男の子だと知ったときは、すごくわくわくし、(あっ。誤解のないよう。女の子のときも、別のことでわくわくでした。)男の子の将来の夢を、いろいろ想像していました。

 「私もやっちゃんも足速かったから、きっと足速いはず。やっぱりスポーツ選手よねえ。イチローみたいになって、大リーガーとかなったりして・・・」とか夢が果てしなく続いて・・・。


 とそんなすごいことでなくても、親ならば、自分の子どもの将来に少しは希望を持ったりすると思います。(平凡でもいい。幸せな家庭が築けたら・・・とか、健康で明るい子に育ったらとか)

 

 自分の子どもの未来の想像を失う・・・というか見失う・・・といった状態になるんでしょうね。


 産後の自分の気持ちの複雑さはここでは書ききれませんが、単純に考えると、喪失感が一番だった。そう思います。


 
 ただ今はっきり言えるのは、私の男の子はコーキーただ一人だということ。

 イチローにはなれないけど、彼の未来は光輝いているということ。

 私にとって、かけがえのない存在になっているということ。


 
 それは、私の人生の中で、とてもとても大きな意味を持つものだと思います。



 産後に読んだ詩で「オランダへようこそ」というのがあります。

 ダウン症の方の親御さんが書かれたものです。

 
 もう一度冷静な気持ちで読んでみると、又違うものを感じます。

 
 
 
 「オランダへようこそ」       作 エミリー・パール・キングスリー  


   
 私はよく障害を持つ子供を育てるって、どんな感じか聞かれることがあります。障害児を育てるというユニークな体験をしたことがない人が理解して、想像出来るようにこんな話をします。

 出産の準備をするというのは、すてきな旅行の計画をすることに似ています。例えば、イタリアへの旅。旅行ガイドをどっさり買い込み、現地での行動を計画します。ローマのコロシアム。ミケランジェロのダビデ像。ベニスのゴンドラ。簡単なイタリア語を覚えるかも知れません。とても、わくわくします。

 そして、何ヶ月も待ちに待ったその日がやってきます。あなたはカバンを持って、いよいよ出発です。数時間後、あなたを乗せた飛行機が着陸します。スチュワーデスが来て、「オランダへようこそ。」と言います。

 「オランダですって?」とあなたは驚きます。「オランダってどういうこと?私はイタリアへ行くはずだったのよ!ずっと前からの夢だったのに!」  しかし、飛行計画が変更になり、オランダへ着陸したのです。あなたはそこに留まらなければなりません。

 ここで考えて欲しいのは、あなたは不快で汚くて、伝染病、飢饉や、病に侵されたひどい場所に連れてこられたのではないと言うことです。ただ、ちょっと違う場所なのです。

 あなたは、新しい旅行ガイドを買わなければなりません。そして、全く違う言葉を覚えなければならないのです。また、今まで会ったことのない人々に出会うことになります。

 ちょっと違う場所へ来ただけなのです。イタリアに比べて、時はゆっくりと過ぎていき、イタリアのような華やかさはありません。でもしばらくここにいて、深く息を吸いこんで、周りをみわたすと…オランダには風車があることに気がつきます…チューリップも。オランダにはレンブラントの絵もあります。

 あなたの知人たちは、イタリアへ行ったり来たりして、とても楽しい時間を過ごしたと自慢します。あなたは残りの人生、こう言い続けるでしょう。「私もイタリアへ行くはずだったの。そのつもりだったの。」

 イタリアへ行けなかった痛みは癒えることはないでしょう。失った夢はあまりにも大きすぎるのです。

 しかし、いつまでもイタリアに行けなかったことを悔やんでいると、オランダのすばらしさや、美しさを楽しむことは出来ないでしょう。


 
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by decorfin | 2010-10-04 09:28 | ダウン症や障碍のこと


ミレニアムBABY、元気いっぱいの女の子、ぴりか。  2004年生まれの男の子、ダウン症持ちのコーキー。   我が家のちいさなひとたちを中心に、平凡のような、そうでないような毎日を綴っていきます。


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